『はるかカーテンコールまで』初出と蛇足の紙

『はるかカーテンコールまで』初出と蛇足の紙(上)

『はるかカーテンコールまで』初出と蛇足の紙(下)

※歌集の出版から約1年後の2020年10月18日に、収録作の初出一覧と短めのコメントをA4用紙2枚にまとめた紙です。
当初はネットプリントで配信しましたが、アーカイブとしてサイトで見られるように収録します。

『はるかカーテンコールまで』初出と蛇足の紙

・初出はちゃんと調べたつもりですが、間違っているかもしれないです。とくに発行月(掲載誌が見つからなくて奥付が参照できなかったというしょうもない理由で省いたところもあります)。あんまり一次資料としてあてにしないでください。

・コメントはほんとに蛇足です。

・[初出時の歌数]から[歌集に収録した歌数]を単順に引き算すると[落とした歌数]になるわけでは必ずしもないです。連作間での移動など、再編集している場合もあるので。

木馬と水鳥  初出時30首、「歌壇」2013年2月号、歌壇賞候補作

このときの受賞者は服部真里子さん。当時、やくしまるえつこメトロオーケストラの『ノルニル/少年よ我に帰れ』を毎晩寝る前に聴いていました。

もう痛くない、まだ帰れない  初出時15首、「京大短歌」16号(2010年3月)

紙媒体に連作がまるごと載ったという意味ではデビュー作でしょうか。ガーナブラックは個包装で28枚入りとかのやつをつねに鞄に入れていました。

starry telling  初出時15首、「京大短歌」17号(2011年3月)

これとかとくに、その後も形を変えて作品にあらわれるオブセッションがぎゅっと詰まってる気がします。

フェイクファー  初出時50首、角川「短歌」2012年11月号、角川短歌賞佳作

このときの受賞者は藪内亮輔さん。高野の郵便局のゆうゆう窓口に出しに行って、帰り道に「これがだめだったらもうほんと(短歌にかぎらずもろもろ)だめかもわからんな」と思ったのを覚えています。

ラウンダバウト  初出時15首、「京大短歌」19号(2013年4月)

この時期は〈まわり、めぐる〉みたいなことについてよく考えていました。

声よ、飛んでいるか 制作時50首、角川「短歌」2013年11月号に一部掲載、角川短歌賞候補

飛ぶことについてもずっと考えていて、森博嗣の「スカイ・クロラ」シリーズはたぶん5回くらい読み返しています。

サマータイム  初出時10首、現代短歌新聞2012年8月号

直接は関係ないんですけど、小島麻由美の「サマータイム」は名曲です。

月影の道  制作時30首、未発表(2010年歌壇賞応募作)

このころはいろんなアプローチをしようと思って、その一環で家族の歌を作りました。

論より小鳥 制作時 30首、未発表(2011年短歌研究新人賞応募作)

短歌研究新人賞にはたしか2回くらい出して、箸にも棒にもでした。

傘には名前  制作時30首、未発表(2011年歌壇賞予選通過)

このときの受賞者は平岡直子さん。

千年一夜  初出時15首、「京大短歌」18号(2012年3月)

この時期は休学して半年弱石川に帰っていたので、だからこそ京都の連作だったのかも。偏愛する京都の場所はもっとあって、のちに小説の個人誌『イミテーション・リリィ』(通販中です)でもいくつか書いているのですが、隙あらばまだまだ語りたいです。

For You 初出時 15首、「京大短歌」21号(2015年)

志村貴子『放浪息子』へのオマージュ。初めに設計図(偶数首目が登場人物の名前の折句)を決めて作りました。二次創作ほど作家性を裸にされるものもないのではないかという気がします。歌集中、この連作だけ「ぼく」がひらがなです。

うたかた 初出時 10首、「共有結晶」vol.3(2014年11月)

BL短歌誌「共有結晶」への寄稿。〈私〉や〈男性(性)〉を拡張し相対化するのに利用できたら、という野心みたいなものもあったと思います。ほんとに参加してみてよかったです。

半月ほど西日 初出時7首、ネットプリント「金魚ファー」第6号(2012年12月)

山中千瀬さんとタイトルを共有しての7首連作×2は3回やったのですが、そのうちのひとつ(残りふたつは「木造繁華街」「金魚ファー」)。連作とこのときの12月の空気がないまぜになって、いまでもすごく覚えています。グランドピアノの歌は神楽岡歌会の記念歌会で岡井隆さんに採っていただいて(得票は岡井さんの1票のみ)、それも感慨深いです。まとめ本『金魚ファーラウェイ』に再録。

噓と夏の手 制作時30首(2013年歌壇賞予選通過)→初出時15首(「京大短歌」20号 2014年)

京都で作った最後の連作です。

pink  初出時20首、「遠泳」1号(2019年1月)

何年も何年も書こう、書かなければと思いつつずっと書けなかったものが、ようやく手が追いついて書けた!な連作がこれです。タイトルはあらゆる「ピンク」を参照していますが、直接的には岡崎京子と大森靖子です。英語で小文字なのがかっこいいなって。

正夢  初出時7首、「NHK短歌」2015年12月号

12月号なんで正夢かなあと思って。表題歌はスピッツの本歌取りです。

ラネーフスカヤだったわたしへ 初出時7首、「スカシカシパン2017」(2017年4月)

金沢でやっている歌会「鏡の会」のアンソロジーに寄稿。奈良なのにラネーフスカヤなのは、このときたまたま行きのサンダーバードで新潮文庫の『桜の園・三人姉妹』を読んでいたからです(なお京都で降りるとき荷物を忘れて大坂駅まで取りに行き、大坂から奈良へ大回りしました)。「桜の園」というと、みやのともちか『ゆびさきミルクティー』の作中劇での印象が強いです。

客演 初出時10首、ネットプリント「ぺんぎんぱんつの紙30 夏への扉」(2017年7月)

田丸まひるさん&しんくわさんのネプリにお声がけいただいて何度目かでお邪魔しました。ヒースクリフの歌は藤原龍一郎さんが褒めてくださいました(葉書で)。

むしろ心を薄くして 初出時 12首、「つばさ」13号(2015年4月)

2014年に石川に戻って、つばさの歌会にも参加させてもらい、上の世代の喜多昭夫さんや会員の皆さまの読みにとても刺激を受けました。鳥の心の歌は自分でも好きです。

バスタ新宿 初出時 10首、「かばん」2019年5月号

ゲストルームに呼んでいただいて書きました。歌集の中で制作時期がもっとも新しい連作です。バスタ新宿ができたあとはなんとなく違う世界に移ったみたいな感じがします。京都からたまに行ってたころの新宿駅のあのあたりはいつも工事してたなー。クリスピークリームドーナツももうないですね。

デッドエンドを照らす 初出時 12首、「つばさ」14号(2016年)

デッドエンドという言葉を知ったのは吉本ばなな『デッドエンドの思い出』だったと思います。

何もなかったように 制作時30首(2016年歌壇賞応募)→初出時15首 「京大短歌」23号(2017年)

タイトルは荒井由実の同名曲から。というのも、映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』の劇中でCocco演じる真白が歌うシーンがあって、サントラで繰り返しくりかえし聴きました。

雨音をやがて失う  初出時19首、「つばさ」15号(2017年11月)

「デッドエンド〜」からのラスト4作品の並び方はとくに気に入っています。

前日譚 初出時 20首、「サンカク」(2014年11月)

土岐友浩さん編集の短歌同人誌「一角」シリーズの3冊め。「前日譚」は歌集のタイトル候補でもありました。まあだいたいおんなじ意味です(ほんとかな)。