短歌
うたかた

白鍵ははかない渚あたたかな雨に打たれるのを待っている すきとおる君の譜面をめくるべく手を伸べ そこで果てたり夢は ちっぽけなポーチを膝にそっと置く仕草すずしき君の恋人 「口紅を直しに」という正当がほしくてつぶすライスコロ […]

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短歌
【web再録】『日記に幕は下りません』おまけペーパー

柳川麻衣さんとの交換日記の本『日記に幕は下りません』のおまけペーパーです。 画像をクリックすると拡大されます。 柳川さんが笠木の短歌から掌編小説を、笠木が柳川さんの小説『オフィスに百合は咲きません』(出版社が舞台のもどか […]

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鑑賞・評論
裏・TOKYO2020 ―みづな and アキ『約束のあとさき』書評

 『約束のあとさき』の著者は「みづな and あき」、すなわち喜多昭夫と森尾みづなの共作による歌集である。本書のゲラを読んだ際は、一人が一首を作って返歌をつなげていく方式だと思って読んだのだが、あとがきによると、著者二人 […]

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自作解題
『はるかカーテンコールまで』初出と蛇足の紙

※歌集の出版から約1年後の2020年10月18日に、収録作の初出一覧と短めのコメントをA4用紙2枚にまとめた紙です。 当初はネットプリントで配信しましたが、アーカイブとしてサイトで見られるように収録します。 Conten […]

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短歌
2023年の自選5首

台風があした来る日に通りから声かけて買うちいさなブーケ 「可能世界のちいさなブーケ」/「Sister On a Water」vol.5 * においから桜はひらきこの星にいつか途絶える観測史あり ウィルスの屋形船なる人の身 […]

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短歌
2022年の自選5首

失った名前は肺のかたすみに霜を置くから何度も呼んだ 「愛から醒めて」/「短歌研究」4月号   * きみといるといつもかもめが背景を奥へゆく なぜかな さよなら あかねさすオランジェットは見ていないときに満ち欠けする贈り物 […]

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小説
さよなら夏の光

 これはわたしの、夏の光の記録である。  あやさんは呼吸するように本を読む人だった。背筋をまっすぐに伸ばして、口の高さまで本を掲げ、ぴたっと静止させて、読む。その姿を図書室のカウンター越しにはじめて見たときから、おもえば […]

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エッセイ
ミドリさん

 「ミドリさん」という常連客の話を、友人から聞いた。  洋菓子店で働く東京の友人である。ミドリさんというのは店員がつけたあだ名で、本名は「チエミさん」というのだそうだ。  さて、友人はいかにしてミドリさんの本名を知り得た […]

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エッセイ
夢にだに見で

 夢にさえ見ていない。  見えているのは交差点だ。三台以上が連なって停まることはない深夜の交差点。音のあるものはみんな滅んでしまったんじゃないかってすぐ不安になるけれど、ときどきは車が通過してくれるからその都度安心できる […]

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鑑賞・評論
見えるものと消えないもの(土岐友浩『僕は行くよ』書評)

 本書において土岐は歩き、眺め、また歩く。目の前のものを精確に描写する一方で、自己と世界について思索する。2DのRPGをプレイするとき、マップを歩く主人公を見下ろす視点が、敵との遭遇エンカウント時には主観に切り替わる、そ […]

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