関係性という幽霊、信仰という疼き ――新井煮干し子『渾名をくれ』に寄せて
2023年11月12日
さいきん思うのだけれど、「関係性」って幽霊みたいなものだ。読者として作中の2人(以上)について、たとえば「お互いすぐ憎まれ口叩くけどラブラブ」とか思ったとしても、それって外側から、あるいは上空から観察して作り上げた解釈 […]
夢のなかのミサンガ、または地の底のハーゲンダッツ・ヴェンダー
2023年11月12日
夜の話をしよう。 京都は宇宙一寒い。これは真理だ。そんな極寒の地の底にこの三月まで八年も住んでいたくせに、慣れるどころかいよいよ寒さに弱いこのごろである。新緑の季節になってもヒートテックを履いていたし、衣替えはまるま […]
何もなかったように、みたいに
2022年9月3日
忘れた、といつか答えて笑うだろうこの夕暮れの首のにおいも 笠木拓「何もなかったように」『京大短歌23号』 6月の誕生日のときに書こうと思っていた日記を今さら書きますね。 * 誕生日は月末の月曜日で、前の週の金曜日は仕 […]
歌の声、「私」の地平
2022年8月11日
『島田修二歌集』(国文社)をひさしぶりに開いた。たとえば次のような歌に、あらためて心を動かされる。 もの書きて畢るにあらぬこれの世の浄福に似てとほき夕映『冬音』 雨降れば甕にしづけく水溜るこの確かさに生きたきものを『渚の […]
短歌を始めたころ(1)
2022年1月8日
「そっか、じゃあ今は君がシリウスを吹いているんだね」とK先輩は言った。 二〇〇四年の十二月、奈良は斑鳩でのことだった。寒々しい田んぼの間を並んで歩きながら、噂にだけ聞いていた同じ担当楽器のOGと、初めて会ってそんな話をし […]
2021年の自選5首
2022年1月6日
うつくしくかなしくめぐる季節とか夢とかおすし手からはなれて 「路銀と借景」/「弦」54号 * 夜のみぎ夜のひだりへ街灯は光を分かつ双葉のように 「ゆめかようみち」/「歌壇」4月号 * 海に架かる橋はたてごとその弦 […]